ずっと楽しみにしていたライブの日。前の予定がギリギリに終わり、急いでレンタルチャリを借りるとタイヤがパンクしており、近くの停留所で別のチャリに乗り換える。なんとか開始数分前に着席。始まって二曲目で一番好きな曲をやってくれて間に合ってほんとによかった。
ボーカル+ダブ処理?でピアノの弾き語りという珍しい編成。ダブと書いたが、声の加工にディレイというよりはSoundtoysのプラグインであるクリスタライザー的なもの(グラニューラという名前のほうが有名かもしれない)を使っていて、加工自体は音響側でやっていた。その名の通り残響として反復される声がキラキラするのである。かねがねクリスタライザー的なエフェクトは不気味だなと思っていたが、今回みたアーティストのカラッとした快活さとの対比もあってか、その想いが強くなった。
音源ではループが基本のビートものの楽曲も、声とピアノのみという編成に変えることで、表現の幅(声の抑揚、間のとりかた、発声の仕方などにももちろんよるが)ってこんなに広げることができるんだと驚いた。上原ひろみを見たとき以来の衝撃である。ピアノという楽器の(当たり前のことではあるが)10本の指で同時に音を鳴らせるということの特別さよ。これと同じようなことが例えばサンプラーで出来るだろうか。そういったことについてきちんと考えないと、と思うなど。
ダブルアンコールをはじめてみた。大きめのホール会場で着席だったのだけれど、最後は総立ちで、そのアーティストと音楽の力を痛感しつつも同時に怖くもあった。
いやーすごいものを見た、と反芻しながら歩いて帰っていると、以前付き合っていた人からなんともいえない連絡があり、そういうところが嫌だったんだよと、蓋をしていた昔の記憶を思い出した。あの時に「いや」は「いや!」と言えてたらよかった。